店研創意50周年記念座談会【後編】

未来への挑戦――新領域開拓と次世代ビジョンの実現

前編では、コロナ禍という試練を乗り越えた店研創意の組織変革について聞きました。
後編では、空間プロデュース事業部とストアエキスプレス事業部それぞれの具体的な取り組み、事業部間の連携強化、そして次の50年に向けた展望について、さらに深く掘り下げて語ってもらいました。

空間プロデュース事業部の新たな挑戦――商業空間を超えて

———2021年に空間プロデュース事業部を設立された背景をお聞かせください。

増島:
2020年から始まった成長戦略プロジェクトの中で、社外から「設計施工もできる点をより前面に出すべきだ」というアドバイスがありました。物販と比べると宣伝が難しく、若干後回しになっていた点を突かれた形です。そこで、新たに仕切り直し、組織化することにしました。

岩井:
事業部として独立させることで、新しい領域や、今までハードルが高くて取り組めなかった、難易度の高い店づくりにも挑戦できるようになりました。もちろん失敗も多々ありますが、この数年で確実に軌道に乗ってきています。

———「価値ある空間づくりを通じて感動を分かち合う」というビジョンについて教えてください。

岩井:
このビジョンは、現場のメンバーと一緒に7〜8ヶ月かけて作り上げました。お客様にとって価値のある空間であり、同時に自分たちも誇りを持てるような仕事をしたいという思いを込めています。


増島:
最初は本当に苦労しました。「何のためにビジョンを作るのか」という原点から始まり、自分たちで一から作り出す過程には産みの苦しみがありました。しかし、その経験があったからこそ、次に取り組んだストアエキスプレス事業部は、2〜3ヶ月でビジョンを策定することができました。 


小林:
ビジョンを作ることの意義が社内に浸透したからです。今では社内プレゼンテーションの際にも、ビジョンへの言及から入る社員が増えています。

———飲食店への展開が増えていると聞きました。

岩井:
以前から大手ファストフード店などとお付き合いがあったのですが、攻めきれていませんでした。ビジョンを機に、社員が一丸となって本格的に取り組み始めました。
ただ、物販店と飲食店では全く違うノウハウが必要です。作り上げるプロセスや部材の使い方、捉え方が全く違います。特に飲食店では、厨房設備や配管、クリンネスなども考慮しなくてはいけません。物販のノウハウで飲食に転用できるのは、3割程度だろうと感じています。
しかし、我々の強みであるものづくりの技術を活かし、コロナ禍においては、飛沫感染対策のパーテーション、オープン陳列からショーケースへの仕様変更といった什器の製作・提供で貢献した実績もあります。

———年間2000店舗という実績をもち、オフィスや住空間への展開を始めています。

岩井:
最近は、お客様もどんどん業態を変えられたり、海外出店されたりと、試行錯誤されています。チェーン店全体での業態・業種変更などへの対応は難易度が高く、腕の見せ所だと言えますね。
オフィスや住空間については、ここ数年の展開で、まだまだ発展途上です。しかし、リサーチとチャレンジを怠らず、しっかりとお客様に価値提供できるよう努力しています。社員からは、「オフィス設計に関連する資格を取らせてください」といったリクエストも出ており、「新領域を担うプロフェッショナルになる」という意識の高い人材がいることが心強いです 。



ストアエキスプレス事業部の進化――「熱い想い」が生み出すイノベーション

———「熱い想いでワクワクの未来を創る」というビジョンに込めた思いを教えてください。

小林:
このビジョンには、若手メンバーの思いが強く反映されています。「安いから選んでいただける」「店研創意でいい」ではなく、「店研創意がいい」と選ばれる存在になりたいという思いが込められています。
特に印象的だったのは、ビジョン策定の議論の中で「今までの店研創意ではできなかったことを、自分たちの代でやろう」という声が出てきたことです。自信を持って価値を語れる商品・サービスを作っていこうという気持ちが、「熱い想い」という言葉に表れています。

———完全オリジナル商品も多いとか。開発の歴史について教えてください。

小林:
オリジナル商品は創業当時からの軸なのですが、当時は自社で完結できない部分もあり、大手メーカーさんと連携しながら作っていました。2000年代からは、自社で企画から設計・製造までできる体制づくりを進めており、今はその売上が中心になってきています。
当社の手掛ける什器の特徴の一つに「細さ」があります。細さと強度を両立した商品を、お客様が簡単に組み立てられる状態でお届けします。従来は頑丈さを求めて太く分厚い材料を使うメーカーが多い中、我々は細くて機能的に使えるものを追求してきました。
また、木製品とスチールをうまく組み合わせた商品づくりは、かなり早い段階から着手しており、今でも当社のものづくりのコアになっています。

———販売チャネルが多様だというお話がありましたが、それぞれどのような役割があるのでしょうか?

小林:
社内ではビジネスモデルを三角形に例えて表現しています。一番裾野の広いチャネルとしてECサイトがあり、そこで認知いただいて最初に買っていただく。そこから店舗・ショールーム で実際に触れていただき、大型の什器などを購入いただく。企業のお客様は、法人営業でより手厚くサポートし、一番上が設計施工という流れです。ECサイト、カタログ、店舗、法人営業、設計施工という三角形の中で、お客様に最適なチャネルでサービスを提供するビジネスモデルです。

———ショールームなどの展開戦略についてはいかがですか。

小林:
2023年にはバーチャルショールームをオープンしました。VR機能を使って全国どこのお客様でも、我々の商品を商空間に収まった状態で見ていただけるツールです。
全国に3か所ある店舗 ・ショールームも随時改装して、単にものを売る場所ではなく、我々の商品サービスを体験いただく場所として位置づけています。福岡店では2階をオフィス ・コントラクト家具専用ショールームにするなど、今の我々ができることを集約した形で展開しています 。



事業部連携の深化――競い合いから補完関係へ

———設計・施工と物販の両方で対応できることが強みですが、事業部間の連携はどのように進化してきましたか?

増島:
正直な話をしますと、連携ができるようになったのはこの10年ぐらいのことです。その前は営業職個人がお客様を開拓して抱えるスタイルが中心で、横のやりとりがあまりありませんでした。
今はお客様に対して、どちらからもアプローチしますし、お互いで補完し合うという形になっています。今の方が健全で持続性があると思います。

岩井:
例えば、出店時は空間プロデュース事業部が設計施工で対応し、オープン後に必要なものが出てきた場合はストアエキスプレス事業部が引き継ぐといった形です。改装を相談いただいた際、ストアエキスプレスの商品で課題解決できそうなら、そちらをおすすめすることもあります。こういったご提案は、お客様には非常に喜んでいただけますね。最適なサービスを多彩なチャネルで提供できていると思います。

———実際の連携事例はありますか?

増島:
営業や商品開発部門はもちろん、担当者レベルでの連携も自然に行われています。商品開発に現場の声を活かそうということで、商品部が営業に同行する動きもあります。お客様を起点にサービスを提供する仕組みが確固たるものになっており、セクショナリズムは、もはや過去のものです。


グループ連携の新展開――ENENとの協業

———子会社のENEN(エネン)との連携について教えてください。

小林:
ENENは成長戦略プロジェクトの中で、店研創意のリソースを使って生まれた会社です。家庭用のデザイン家具を中心とした事業で、我々とは違うエッセンスを持った商品を提供しています。現在はBtoCがメインですが、我々の販売チャネルを通じて広めていく取り組みを始めています。


増島:
実際、ENENが販売する上質な家具や雑貨は、BtoBでも求められることが多くなってきました。それならば、我々のチャネルでも武器になる、武器にしようと取り組みを始めています。デザインで選ばれるENENと機能性で選ばれる店研創意の業務用家具、この2つの軸で家具の提案をしていこうと考えています。


次の50年への展望――世の中の空間すべてに関わる未来を

———次の50年に向けて、どのような展望をお持ちですか?

増島:
私は、年齢的に次の50年を見届けることはないでしょう。しかし、今の若いプレイヤーたちがどんどん磨きをかけて、商業だけではなく、さまざまな空間で事業領域を広げ、社会貢献を果たしている、そんな企業になっていてほしいと願っています。現在はパブリックファニチャーなど公共の場で使う家具開発にも取り組んでいます。50年後にはそうした領域を超えたところまで手がけていてほしいですね。

小林:
「できないと思わず、チャレンジしよう」「できる方法を考えよう」というマインドを大切にしています。大西グループのビジョンにもある「挑戦する勇気を持つ」という言葉の通り、「やってやるぞ」とチャレンジしてくれる若い人材が増えていますから、確かな希望は感じていますね。

岩井:
価値ある空間づくりを追求していく中で、商業空間、オフィス、飲食など、領域がどんどん細分化され、それぞれが事業部化されていると面白いなと想像します。飲食やオフィスのスペシャリストがいて、それぞれのノウハウが現場にも溜まっていく。そうした専門性を持ったプロフェッショナル集団になっていけるよう、チャレンジしていきたいと思います。


———最後に店研創意に関わる方々へメッセージをお願いします。

増島:
今まで商業空間を中心に価値提供してきた店研創意ですが、あえて大きく言うと、世の中の空間という空間すべてに関われるような、そこで生活する人たちも含めて喜んでもらえる価値を提供できたらと思います。 店研創意という社名には「店舗を研究し、創意工夫する」という意味が込められています。50年前の創業時から変わらないこの精神を大切にしながら、次の50年では「空間を研究し、創意工夫する」会社として、さらに大きく羽ばたいていきたいと思います。お客様に喜んでいただける空間づくりを通じて、社会全体に貢献できる企業であり続けたい。それが、50周年を迎えた今、私たちが抱く最大の願いです。



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